東京高等裁判所 昭和26年(う)2775号 判決
昭和二十五年五月九日附追起訴状には「被告人は田村こと姜大植、上野こと朴再夏、井上こと朴海東等が埼玉県児玉郡藤田村内野美好方より窃取してきた衣類約百十点位をその情を知り乍ら原田こと趙斗、及び高橋貢を通じて昭和二十四年十一月十二日頃東京都北区仲原町一ノ一延本こと瑢植方において小松崎角三郞外二名に対し前記衣類約百十点を賍物であることを知り乍ら代金十五万八千円にて売却の斡旋をしてやり以て賍物の牙保をなしたものである」と記載されているのに対し原審は訴因変更の手続をとらないで判決において「姜大植、上野こと朴再夏、井上こと朴海東等が他から窃取した衣類二百数十点をその賍品たる情を知り乍ら趙斗、高橋貢を介し同年十一月十二日頃同区仲原一丁目一番地延本こと、瑢植方において小松角之助外二名に対し代金十五万八千円にて売却の斡旋をなし以て賍物の牙保をなしたものである」と判示していることは論旨の指摘するとおりである。そして原判示の小松角之助とあるのは小松崎角之助の誤記であることは明らかであるが論旨は衣類の点数につき起訴状には約百十点と記載されているのに原判決は訴因変更の手続をとらないでその点数を二百数十点と認定したことは審判の請求を受けない事件につき審判をした違法があると主張するからこの点につき按じるのにこの両者は単に数量の点が異るに過ぎないのであるから公訴事実の同一性が害せられていないことは疑いの余地なく又賍物罪におけるこの程度の数量の異同は当事者の攻撃防禦に実質的な不利益を生ずるおそれがないからかくの如き場合には訴因を変更する必要はないものと解すべく従つて原審が証拠に基いてその点数を原判示の如く認定したことは相当であるということができる。それゆえ論旨は理由がない。